1.ロボティック看護学の提唱
ロボティック看護学[robotics nursing]は,“ロボットの設計・製作・制御を行うロボット学をもとにして,人間に親和的な看護ロボットの開発・実装を実現する看護学”である.たとえば,AIを搭載したロボット看護師は,バイタルサイン測定などの看護業務を行い,看護師の負担軽減や業務の効率を高めることができ,看護師が本来のやるべきことに専念できるようになる.
看護は,高いコミュニケーション能力,全人的な関わりを行う対人サービスである.人間が人間を看るという看護は,人間でなければできない仕事であり,看護職はAI時代にも生き残る職業であるといわれている.看護職は,エッセンシャルワーカー(essential worker,生活必須職従事者)である.
電子人間(電子人)[electronic person]は,“AIを搭載したロボット向けの法的地位”である.ロボットが賢明な自律的決定をくだしたり,独立して第三者と相互作用したりする場合に,電子人格を適用することになる.今後は,ロボットの倫理や責任に関するいくつかの問題を解決しなければならない.たとえば,ロボット看護師がインシデントやアクシデントに関与した場合に,誰の責任を問えばよいのかという問題がある.
2.アバター看護師によるオンライン看護
アバター(アヴァター)[avatar]は,“ネットワーク上の仮想空間での分身”である.
アバターロボット(分身ロボット)[avatar robot]は,“バーチャルに存在するアバターをリアルの世界で実現するロボット”である.人間が遠隔からアバターロボットを操作し,ロボットが体験したことを自分のからだで体験できる.たとえば,看護職者の分身となるアバターロボット(アバター看護師)を患者の自宅に設置し,そのアバターを遠隔操作し,患者やその家族とコミュニケーションをとったり,オンライン看護を提供できる.
3.XRが生み出す新たな現実と可能性
XR(X Reality,エックスアール,クロスリアリティ)は,“VR(Virtual Reality,仮想現実),AR(Augmented Reality,拡張現実),MR(Mixed Reality,複合現実),SR(Substitutional Reality,代替現実)を包括的に表現した仮想空間技術”である.XRは,ウェブページ(World Wide Webを使ってウェブブラウザで閲覧可能なページ),SNS(social networking service,ソーシャルネットワーキングサービス)に続く,第3の巨大プラットフォームを生み出すと考えられる.
XRは,現実世界と仮想世界を融合させて新しい体験を提供する技術であり,現実世界と仮想世界の融合の度合いが異なるVR,AR,MR,SRがある.しかし,これらの境界線が曖昧になっているので,多様な新しい現実を総称してXRという.
たとえば,沐浴の演習が必要な看護学生は,VRゴーグル(ヘッドマウントディスプレイ)が創出した仮想の沐浴槽で,沐浴のシミュレーションができるなど,現実体験を変化させることが可能になる.